St.John Restaurant In London
僕が案内してもらった席は、ホールからキッチンまでの全てを見渡せる角席。いわば特等席だった。(どこに行っても割と角が落ち着く僕にとって)13時前になると続々と予約客がそれぞれの席に着いた。皆、席に座っては足を組みメニューにざっと目を通しウエイターが来るまでの間は談笑をする。そんな光景を角席でポツリと座って眺めていた。そしたら僕のところにもウエイターが来て、”Hi,how are you?”と。僕もすぐさま”I’m good.You good?”と返した。それから少しだけ挨拶がわりの会話をして注文を聞いてくれた。ランチ時間の真只中ではあるがロンドンに到着してすぐの僕はなぜかお腹が空いていなくてウエイターにこう言った。”I wanna eat something sweat.” するとそのウエイターは、”こんな時間にもうデザート食べるのか?”と言いながらも詳しくメニューの説明をしてくれた。説明されればされるほど迷ってしまうただの優柔不断な僕はもう少し待ってくれと言った。(その間に炭酸水かお水かどちらか聞かれた時に、"Sparkling or flat?”と聞かれてflat waterってなんだよって一瞬思ったけどsparklingの逆は普通の水か、なんてことも)
何を頼もうとまずメニューとともに出される(お通し)のが、このカンパーニュと固形のバター。カンパーニュの表面は割としっかり歯応えを与え、中はしっとりとした食感。噛めば噛むほど滋味深い小麦の香りが口の中に広がった。アメリカーノと一緒に食べると、バリっとした表面に液体が染みてちょうど良くなる。 僕はどちらかというと固形のバターが好きだった。塩味が強めで硬いし常温でもなかなか溶けないから、全くカンパーニュと一体化しない。むしろ硬い表面の部分を使って削らないといけないくらいだ。それぐらいの別物感がロンドン初日の僕になんとも言えない落ち着きをくれた。いい塩梅とは案外こういうことを言うのかもしれない。このカンパーニュとバターにアメリカーノのセットで朝を迎えたいとすら思った。
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Written & Photographed by Katsushin Morimoto