露天風呂にて

露天風呂にて

北海道 / 洞爺湖

今回の”種と旅と”の取材で僕は、北海道に行っていました。ニセコのlalalafarmに行き7/31に提供する冷やしおでんに使う野菜の撮影をしたり、兼ねてからお世話になっている洞爺のラムヤートに伺ったり。ですが、北海道に行くというのに1泊2日の弾丸旅であったのです。

案の定、あっという間に時は過ぎ、帰る飛行機に乗る少し前に空港から近い長沼という街でカレーを食べてその後温泉に。そこは大浴場という名がよく似合う広さの温泉でした。僕が入浴したのが夕方の5時頃。そこはもう、おっちゃんたちの日常的な憩いの場であり、若いのは僕しかいないことはすぐに見てとれました。それでも、気持ちいい湯に入りに来ているわけですからそんなことは気にもせず黙々と温冷浴を繰り返していました。その途中で少し涼もうと露天風呂に行くとそこにはキュッと引き締まったお尻の持ち主が。いいケツしてんなあ〜って思いながら湯に浸かり風を感じていると、なぜか急にそのおっちゃんとの会話が始まったのです。

おっちゃん:「曇ってきたな〜」
僕:「そうですね」
おっちゃん:「雨が降らなかったらいいけどね」
僕:「持ち堪えますかね」
おっちゃん:「君はこの近くに住んでるの?」
僕:「いや、兵庫なんですよ。」
おっちゃん:「兵庫から来たのか。なんか用事があって?」
僕:「はい。洞爺とニセコに用事があって北海道にきました。」
おっちゃん:「洞爺って、あの湖があるとこかい?」
僕:「そうです、そうです。」
おっちゃん:「そしたらなんでこんなとこおるんや。」
僕:「この近くに食べたかったカレー屋さんがあって、その後にゆっくりしようかなと思って探したら温泉があったので。」
おっちゃん:「なんでここなんや。温泉入りたいなら、もっといいところあるのに。」
僕:「そうなんですね。でもここもいい温泉じゃないですか。」
おっちゃん:「いやいや、せっかく兵庫から来てるのに勿体無いわ。」
僕:「そんなことないですよ。広くてゆっくりできますし。」
おっちゃん:「ところで、いつこっちに来たの?」
僕:「昨日のお昼前につきました」
おっちゃん:「何日間北海道にいるの?1週間くらいか?」
僕:「それが、今日で帰るんですよ。」
おっちゃん:「え!?一泊二日ってことか?」
僕:「そうなんです。」
おっちゃん「おいおい、ほんとかそれ。」
僕:「ほんとです。ほんとです。」
おっちゃん:「君が僕の息子なら、絶対行くなって言ってるよ。一泊二日なんて。」
僕:「そんなこと言わないでくださいよ。」
おっちゃん:「勿体無いよほんとに。しかも時間限られてるなら余計ここの温泉じゃないでしょ。」
僕:「でも他のとこ知らなかったんで。」
おっちゃん:「連絡くれたらいっぱい教えてあげるのに。」
僕:「そんなことしてくれるんですか?」
おっちゃん:「そりゃいいよ。空港まで迎えに行ってあげるよ。」
僕:「じゃあ、次はお願いしますね。」
おっちゃん:「連絡してきなよ。それから10日間くらい休みとって来な。」
僕:「わかりました。また来ます。」
おっちゃん:「じゃあ、気をつけて帰るんだよ。飛ばすと危ないから、ゆっくりな。」
僕:「はい。ありがとうございます。」
おっちゃん:「それじゃあ、お先に。」

そう言っておっちゃんは、キュッと引き締まったお尻をこっちに向けて出口へ歩いて行きました。
連絡先なんて知らないので、次会うことはないのかもしれませんが。

いい湯とは、温度がどうとか、広さがどうとか、そんなことではないのです。全く知らないものたちが、裸で湯に入る。そして、年齢なんてものはなんの関係もなく、なぜか会話が生まれたり。湯に入るということくらいしか共通していることはないはずなのに。そして、次に会うのはまた”湯”。

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Written & Photographed by Katsushin Morimoto / Writer

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